
【完全ガイド】Looker Studioの使い方とダッシュボード作成の全知識
近年、デジタルマーケティングやBI(ビジネスインテリジェンス)の分野で、データを可視化し意思決定に役立てるニーズが高まっています。Google製の無料BIツールであるLooker Studio(旧:Google Data Studio)は、特に中小企業や個人事業主でも手軽にレポートを作成できるため、多くの企業で導入が進んでいます。
そこで本記事では、「初心者がゼロからLooker Studioを活用し、実際の運用フェーズに至るまで」を体系的に解説します。
- 目次
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Looker Studioとは?──概要とメリット
Looker Studioの概要
Looker Studioは、Googleが提供する無料のBI(ビジネスインテリジェンス)/データ可視化ツールです。正式名称は「Google Looker Studio」で、以前は「Google Data Studio」と呼ばれていました。
主な特徴は以下の通りです。
- 無料で使える:Googleアカウントがあれば追加費用なしで始められる。
- 操作が直感的:ドラッグ&ドロップでグラフやテーブルを作成できる。
- 豊富なデータ接続:Google Analytics 4(GA4)、BigQuery、Google Sheets、YouTube Analytics、広告プラットフォーム(Google Adsなど)とネイティブに連携。
- 共有や埋め込みも簡単:社内外でURL共有や埋め込みタグを利用してレポートを公開できる。
どんな業務に向いているか
- Webマーケティング部門:GA4や広告データを可視化し、キャンペーンの成果測定や予算配分の最適化を行いたい。
- 営業・経営層:売上数値やKPI推移をわかりやすいダッシュボードで定期的にチェックしたい。
- EC運営者:売上データや在庫推移、顧客行動をまとめて可視化し、販売戦略を検討したい。
- 人事・総務:採用数や社員定着率などの人事KPIを可視化し、経営層にわかりやすく提示したい。
データ量が少なくても、大規模データを扱ってもスケールしやすいため、中小企業〜大企業まで幅広く適用できます。
他のBIツールとの違い
比較ポイント | Looker Studio | Tableau(パブリック版以外) | Power BI |
費用 | 無料(Googleアカウント必須) | 有料(パブリック版は無料) | 有料(無料版ありだが機能制限) |
操作感 | 非エンジニア向け、ドラッグ&ドロップ中心 | 高度なカスタマイズ可能だが習得コスト高い | Excelと親和性が高く、Windowsユーザー向け |
データ接続 | Google系サービスとの連携が強み | 様々なDB・クラウドに対応 | Microsoft系サービスと連携しやすい |
共有・コラボレーション | URLで簡単に共有・埋め込み可能 | サーバー構築が必要(Tableau Server等) | Power BI Serviceでの共有が必要 |
※より詳細な比較や他ツールの導入判断については、別記事を参照してください。
要件定義フェーズ──何を明確にすべきか
Looker Studioで「作って終わり」ではなく、“運用されるレポート”を作るには、最初の要件定義が非常に重要です。このフェーズで曖昧なまま始めると、以下のような問題が起こりがちです。
- ユーザーが必要な情報にアクセスできない
- 作り直しの手間や時間が膨大にかかる
- 運用後に誰も使わず放置される
ダッシュボードを作る目的を明確にする
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- 何の意思決定を支援したいか?
例:Web広告のROIを毎週報告し、改善策を検討する/営業の月次KPIを可視化し、目標達成率を把握する など - 誰が閲覧・活用するのか?
経営層:マクロなKPI推移(月次売上、利益率など)
マーケター:広告配信のCPA、クリック率、CVRなど
現場担当者:日別アクセス数、ユーザー行動データ、離脱率など
- どの頻度で更新・報告するのか?
毎日、週次、月次のいずれか。
リアルタイム性が必要ならデータソースの更新頻度も要確認(例:BigQueryを使う際、バッチ更新かストリーム更新か)。
- 何の意思決定を支援したいか?
以上のように目的とユーザーを最初に押さえることで、必要な指標・KPIや表示形式がクリアになります。
利用者(閲覧者/編集者)の整理
- 編集者権限:ダッシュボードの作成・編集を行う人(例:社内マーケティング担当、外部コンサルタント)。
- 閲覧者権限:更新されたレポートを閲覧・共有する人(例:経営層、営業部門)。
- 共有方法の方針:
社内限定でGoogleアカウントによるメール制限をかける
社外(取引先や顧客)にもURLを共有する場合、パスワード保護や限定アドレス制限が可能
「誰が見て、誰が編集するのか」を明確にし、あらかじめ権限設計をしておくことで、情報漏えいや編集ミスのリスクを軽減します。
表示したいKPI/指標の定義
- ビジネスゴールと紐づく指標を洗い出す
例:Webマーケであれば「広告経由CV数」「広告費用対効果(ROAS)」「ユーザー属性別CVR」など。
重要度に応じて「★」「☆」などで優先順位をつける。
- 指標の算出方法を確認する
どのデータソースから取得し、どう計算するか?(例:GA4の「購入イベント」+EC売上=売上金額)
BigQueryでカスタム計算が必要か、Looker Studioの「計算フィールド」で対応可能か。
- 時間軸やセグメントの粒度を考える
日次/週次/月次で加工するか
新規/リピーター、デバイス別、地域別など、どれだけ細かく分けるか
「現時点で最も必要な指標」に絞ることで、ダッシュボードをシンプルに保ち、運用コストも抑えられます。
データソースの洗い出し
- よく使われる接続先例
- GA4(Webサイトの行動ログ)
- Google スプレッドSheets(手作業で用意したデータやCSVインポートしたデータ)
- BigQuery(自社データや他媒体のログを一元化したテーブル)
- Google Ads(広告費用、クリック数、インプレッションなど)
- YouTube Analytics、Search Console、SNS(Facebook Insightsなど)
- 必要な権限・認証方式の確認
- GA4プロパティやBigQueryプロジェクトに対して閲覧権限を持っているか
- API連携する場合、OAuthの認証手順が必要
- データの連携頻度・更新方法
- リアルタイム性はどこまで必要か
- BigQueryへのデータ取り込みは毎日正午に行っているから、Looker Studioでは「日次更新」で十分か
「どのデータをどこから引っ張ってくるか」を明確にし、必要な管理者権限を事前にそろえることで、後々のトラブルを減らせます。
データ設計と連携──接続方法と整形の基本
要件定義で洗い出したデータを、Looker Studio上でどのように取り込み・整形するかを解説します。ここがうまくいかないと、ダッシュボード上で期待する数値が正しく表示されず、分析が頓挫してしまいます。
各種データソースとの接続方法
各種データソースとの接続方法をご紹介します。Lookse Studioにコネクタと呼ばれる接続機能があるため、エンジニアでなくてもノーコードでデータ連携が可能です。
- GA4との接続
- Looker Studioの「データソースを追加」から「Google Analytics」を選択し、該当のプロパティを選ぶだけ。
- 設定できる主要項目:デフォルトチャート日付範囲、データ更新頻度(毎時 or 手動更新など)。
- Google Sheetsとの接続
- 社内で手作業で管理しているスプレッドシートのURLを入力して接続。
- シート名や範囲を指定し、ヘッダー行を正しく認識させることが大事。
- BigQueryとの接続
- 「データソースを追加」→「BigQuery」を選択し、プロジェクトID、データセット、テーブルを指定。
- 必要に応じて「SQLクエリを直接入力」してビューを作成し、そのままLooker Studioに取り込む方法もある。
指標やディメンションの基本用語
- ディメンション(Dimension)
例:「日付」「デバイスカテゴリ」「地域」「キャンペーン名」など、グルーピングや絞り込みに使う属性。
- 指標(Metric)
例:「セッション数」「ユーザー数」「コンバージョン数」「売上金額」など、数値計算される量。
- 計算フィールド(Calculated Field)
- Looker Studio上で新たに指標を作る仕組み
- 例:売上金額 ÷ 広告費用 = ROAS、ユーザー数 ÷ セッション数 = 滞在率 など。
「ディメンション」と「指標」は“縦軸と横軸”のイメージです。ディメンション(縦軸)でグループ分けして、その数を指標(横軸)で表す感覚です。
データの前処理と整形の考え方
データが整っていればすぐに構築に入れるのですが、前処理と整形がとても重要です。BI構築で最も時間がかかる箇所となります。
下記の点に注意しましょう。
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- データの粒度を揃える
- GA4とBigQueryなど、異なるソースを混在させる場合、日付時刻のフォーマットやタイムゾーンを合わせる。
- 例:GA4はUTC基準、BigQueryのテーブルはAsia/Tokyo基準…といった相違点を吸収するSQLクエリを書いておく。
- 不要なデータを切り捨てる
- 例:フィルタリングで内部アクセス(IPフィルタを使って)を除外する、テストアカウントのデータを省くなど。
- カラム名・列名の統一
- 同じ性質のカラム(例:売上金額、Revenue、revenue)が複数あるとLooker Studioで混乱しやすいため、事前に「売上」と統一しておくと管理が楽。
- “ETL”という考え方:
- Extract(抽出) → Transform(変換) → Load(読み込み)
- BigQueryを使ってこのETL処理を行い、Looker Studioにはできるだけ「可視化向けに最適化されたテーブル」を接続するのがベストプラクティスです。
- データの粒度を揃える
データ結合とブレンディングの基礎
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- Looker Studio上でのデータブレンディング
- 異なるデータソース(例:GA4とGoogle スプレッド Sheets)を連携し、一つのグラフ上で表示したい場合に使う。
- キーとなる共通ディメンション(例:日付、キャンペーンIDなど)を設定してブレンド。
- 一度に多くのソースをブレンディングすると表示が重くなる可能性があるので、必要最小限に絞る。
- 同一ソース内(BigQuery内)のテーブル結合
- SQLクエリでJOINして一つのテーブルにまとめる。
- Looker Studioでは、事前にBigQuery側でビューを作ることを推奨。
- Looker Studio上でのデータブレンディング
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BigQueryとの連携時の注意点と設計
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- 認証権限の確認
- BigQueryプロジェクトに対して「BigQuery Data Viewer」「BigQuery User」など適切なロールを付与しておく。
- クエリコストの最適化
- クエリ実行時の読み取りバイト数に応じて料金が発生するため、必要なカラムだけをSELECTする。
- パーティションテーブルやクラスターテーブルを活用して、クエリスキャン量を削減する。
- リアルタイム性が必要な場合
- ストリーミング挿入を使うか、1時間に1回程度のバッチ更新で十分か要件に合わせて設計。
- ビューとテーブルの使い分け
- ビュー:加工ロジックを含めたい場合に活用し、Looker Studioにはビューを接続する。
- テーブル:既存集計済みデータや履歴テーブルを直接参照する。
- 認証権限の確認
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ポイントまとめ
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- BigQueryを「生データ置き場」にして、Looker Studioには「可視化向けテーブル or ビュー」を繋ぐ。
- クエリ最適化はコスト削減に直結するので、事前設計が不可欠。
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レポート設計と実装──見やすいダッシュボードの作り方
ここでは、実際にLooker Studio上でレポートを作成する手順とポイントを解説します。デザインやUIも重視し、誰が見てもわかりやすいダッシュボードを目指しましょう。
レイアウト設計の基本ルール
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- 「F字型」または「Z字型」レイアウトを意識する
- ユーザーの視線は左上から右下へ動く傾向があるため、重要指標(要点)は左上に配置する。
- セクションごとにテーマを分ける
- 例:①サマリー(主要KPI)、②チャネル別パフォーマンス、③ユーザー属性別分析、④推移グラフなど。
- 各セクションは背景色やブロックで区切り、視覚的に区分けする。
- 色彩は3色以内で統一する
- コーポレートカラー+ベースカラー(黒・グレー)+アクセントカラー(重要指標用)程度。
- 過度なカラフル化は逆に見づらさを招くので注意。
- 「F字型」または「Z字型」レイアウトを意識する
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初心者向けアドバイス
最初はシンプルに「タイトル」「主要指標(スコアカード)」「時系列グラフ」「棒グラフ/円グラフ」といった基本コンポーネントだけ配置してみましょう。
グラフ・チャートの選び方と使い分け
グラフ種類 | 用途の例 | ポイント |
スコアカード | 売上、CV数、訪問ユーザー数などの主要KPIを表示 | 最新値と比較指標(前週比、前月比など)を併記するとインパクトが増す |
時系列グラフ | 日次売上推移、週次アクセス数推移などの傾向把握 | 期間切替コントロールを設置し、分析の自由度を高める |
棒グラフ | チャネル別売上、デバイス別ユーザー数などの比較分析 | 棒の色はチャネルやデバイスごとに統一配色し、凡例を明確に示す |
円グラフ | 売上構成比、流入チャネル比率などの内訳把握 | セグメントが多い場合は色分けに注意し、主要セグメントのみ表示 |
表(テーブル) | 最終ページに詳細データを載せ、ダウンロード用途にも対応 | クリックするとソートできるよう、設定を有効にすると使いやすい |
地図チャート | 地域別ユーザー数、地域別売上などを可視化 | 国レベル・都道府県レベルなど、適切な解像度を選択する |
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- 目的に合わせて「要素を厳選」することが大事。
例えば経営層には「スコアカード+時系列グラフ」が十分な場合が多く、詳細な棒グラフやテーブルは別ページに分けた方がシンプルに伝わります。
- 目的に合わせて「要素を厳選」することが大事。
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フィルタや期間選択の設置方法
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- 日付範囲コントロール
- ユーザーが自由に期間を変更できるように「日付範囲コントロール」を上部に配置。
- デフォルトは「過去30日」「当月」「昨対比」など、ユーザーがよく見る期間に設定すると喜ばれます。
- フィルタコントロール
- 例:チャネル(Google Ads, SNS広告, オーガニック検索)/デバイス(PC, モバイル)/地域(関東, 関西など)
- レポートを複数ページにわたって使用したい場合は、**「すべてに適用」**設定にしておくと便利。
- 日付範囲コントロール
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最初は「日付範囲」「チャネルフィルタ」「デバイスフィルタ」の3つを設置し、ユーザーの使い勝手を確認しながら追加していくと失敗が少ないです。
計算フィールドの使い方
計算フィールドを用いて事前に計算された数値を出力することも可能です。
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- カスタム指標を作る
- 例:ROAS = 売上金額 / 広告費用 * 100
- Looker Studioの「計算フィールド」を使って作成し、スコアカードやグラフで表示可能。
- 条件付き指標の作成
- 例:購入数が10以上なら「最優良顧客」、それ以外は「一見さん」といったセグメント分けを計算フィールドで実装。
- CASE文やIF関数を組み合わせて作成できる。
- カスタム指標を作る
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計算フィールドは「可視化の自由度」を一気に高める反面、「データの整合性」を保つのが難しくなります。
複数の指標を掛け合わせる場合は、事前にBigQuery側でビューを作るか、テスト用レポートで表示内容をチェックしてから本番レポートに適用しましょう。
複雑な指標の表現方法
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- ドリルダウン
- 「チャネル別」→「キャンペーン別」→「広告グループ別」というように、クリックすると次の階層に展開できる機能。
- ドリルダウンの条件設定はシンプルにしないと、ユーザーがどこをクリックすればいいかわかりづらくなるため、必要最小限の階層設計を心がける。
- ドリルダウン
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モバイル/PC対応の工夫
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- レスポンシブデザイン
- Looker Studio自体が完全自動レスポンシブではないため、モバイル用に別レポートを用意するケースも多い。
- 単一レポートで対応する場合は、コンポーネントの幅を狭め、フォントサイズを小さめに設定するなど工夫が必要。
- 表示速度
- モバイルではページ読み込みが遅いと離脱につながりやすい。
- 不要なチャートを減らす、ブレンディング数を絞る、BigQuery側で集計済みデータを用意するなど、速度最適化を図る。
- レスポンシブデザイン
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初心者向けアドバイス
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- まずはPC版で設計し、必要に応じてモバイル版を別途作るのが手っ取り早い方法です。
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共有とアクセス制御──適切な公開・権限設定
Looker Studioで作成したダッシュボードは、社内だけでなく、社外への共有・公開シーンも増えています。正しい権限設定と共有方法を知らないと、情報漏えいやアクセス不可のトラブルを招くので注意しましょう。
編集者・閲覧者の権限設定
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- 閲覧者(View権限)
- レポートの閲覧のみ可能。エクスポートやフィルタ操作はできるが、レイアウトやデータソースの編集は不可。
- 編集者(Edit権限)
- 誰でも編集可能とすると誤ってレポートを壊すリスクがあるため、基本は社内の事業責任者またはコンサル担当者だけに付与する。
- コメント権限(Comment権限)
- レポート上でコメントを残せる機能。外部ステークホルダーと“フィードバックセッション”を行う際に便利。
- 閲覧者(View権限)
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**「一斉メール配信で共有」ではなく、「適宜Googleグループや個別メールアドレスで共有」**することで、誰が閲覧したか管理しやすくなります。
定期共有とメール配信の設定方法
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- メール配信のスケジュール設定
Looker Studioでは単体で「スケジュール配信機能」はありませんが、Google Apps Scriptやサードパーティ製の拡張機能を使うことで、
- 毎週月曜日の9:00に最新レポートPDFを指定メールアドレスに送信
- 月次でCSVダウンロードしたデータをメール添付して配信
- メール配信のスケジュール設定
- 具体的には「スクリプトでPDFエクスポートしてGmail送信」の自動化を組むパターンが一般的。
- 初心者向けアドバイス
- 最初は手動で「PDFダウンロード→メール添付」で運用し、慣れてきたら自動化を検討すると、トラブルが減ります。
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レポートの埋め込み・公開方法(社内外共有)
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- 埋め込み(iFrame)
- 社内ポータルサイトや社外Webサイトに「埋め込みコード」を貼り付けるだけで、レポートをそのまま表示可能。
- 埋め込みの際に「パブリックに公開」「特定ドメインのみ公開」など細かく設定できる。
- パブリック公開
- URLを知っていれば誰でもアクセス可能。
- 機密情報を含む場合は絶対に設定しないこと。
- 限定公開(制限付きアクセス)
- URLを持つGoogleアカウントにのみ閲覧権限を付与する方法。
- 社外と共有する際は「閲覧者メールアドレスを登録して、リンクを知っている人のみアクセス可」に設定すると安心。
- 埋め込み(iFrame)
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「社外の代理店にだけ見せたい」「取引先向けに特定のページだけ公開したい」などの要件は、事前に共有範囲をしっかり設計することが重要です。
運用と改善──長期的に使われるレポートを作るコツ
レポートは完成させて終わりではなく、**「使われ続けて、定期的に改善されること」**こそが最大の価値です。ここでは運用フェーズで押さえておきたいポイントをまとめました。
データの更新タイミングと注意点
- データの更新頻度に合わせた確認フローを作る
- 毎朝開くレポートなのか週次会議で使うものなのかで、更新タイミングが異なる。
- 例えば「GA4はリアルタイムで更新されるが、BigQueryのバッチ取り込みは日次19:00に実施」という運用であれば、日中に見ると古いデータが表示される可能性があるので、“更新タイミング”をレポートヘッダーに明確に記載しておく。
- データ欠損やエラー検知
突然データが0になった/数値が大きく異常値になった場合は、
- データソース側の状況(GA4タグ、BigQueryジョブなど)
- Looker Studioの接続ステータス を確認するフローを整備しておく。
表示エラー/データ欠損時の対応方法
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- 「レポートが表示されない」「グラフが真っ白になる」
データソースの認証期限切れや、データソース自体の削除・権限変更が原因のことが多い。
対処方法:
- [データソース]→[編集]→認証し直し
- BigQueryやGA4でテーブル/ビューが消えていないかを確認
- 「数値が意図したものと違う」
フィルタの設定ミス、日付範囲のズレ、計算フィールドの式間違いなどが原因。
対処方法:
- フィルタ条件の確認
- 計算フィールド(CASE文やIF式)のロジックチェック
- BigQuery側のビューやSQLクエリをローカルのサンプルデータで再現してデバッグ
- 「特定ユーザーだけ見られない」
Googleアカウントのメールアドレスが権限設定に入っていない可能性がある。
対処方法:
- レポート右上の[共有]→[ユーザーを追加]から該当メールアドレスを再度登録
- 共有設定が「リンクを知っている全員」に制限されている場合は「特定ユーザーのみ」に切り替えるなど、意図に合わせた設定に変更
- 「レポートが表示されない」「グラフが真っ白になる」
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レポートの効果測定(使われているか?改善ポイント)
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- 利用状況を計測する方法
- Googleアナリティクス(社内ツール)を使って、定期的にレポートの閲覧数/アクセス時間をチェックする。
- 社内アンケートやヒアリングで「どのページが見られているか」「何が足りないか」を聞き取る。
- 改善ポイントの洗い出し
- 「視点が散らかっていて、どこを見ればいいかわからない」という声があれば、ダッシュボードをセクション単位で分割する。
- 「数値が更新されていない/古いまま」という指摘があれば、更新スケジュールや通知フローを見直す。
- 利用状況を計測する方法
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毎月1度はチームで「レポート振り返りミーティング」を実施し、使い勝手評価と改善要望をリスト化しましょう。
そのうえで改善タスクをBacklogやNotionに登録し、継続的に運用を改善していくことが大切です。定期レビューと改善サイクルの回し方
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- KPI達成度チェック
- ダッシュボードで「重要KPI」が期初に設定した目標値に近づいているかを定期的に確認。
- フィードバックループの確立
- レポートに対するフィードバックを一元管理(例:Google フォームやメールでの要望を収集)し、優先度をつけて対応。
- バージョン管理
- Looker Studio自体にはバージョン履歴機能がないため、定期的にレポートのコピーを作成し「YYYYMM版」など名前に付けて保存すると、万が一元に戻したいときに便利。
- 改善タスクの運用管理
- Jira/Asana/Notionなどで「○○月〇週目:レポートレイアウト見直し」「○○月〇週目:新セグメント追加」などタスク化し、関係者で共有。
- KPI達成度チェック
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よくある注意点・トラブル対応──初心者がつまずきやすいポイント
Looker Studioを使い始めたばかりの段階で「あるある」のトラブルや、注意しておきたいポイントを整理しました。これを読んで事前に対策しておきましょう。
よくあるエラーとその対処法
エラー内容 原因候補 対処方法 グラフが表示されない/「エラーが発生しました」と表示される データソースの認証切れ、テーブル削除、権限変更 データソースを再認証、テーブルの存在を確認、権限を再設定 数式が正しく動かない/計算フィールドの結果がおかしい 式のロジックミス、ディメンションの型不一致(テキストと数値) 計算フィールドの式を見直す、データタイプを確認 特定ユーザーだけアクセスできない 共有設定に該当ユーザーが入っていない、リンク設定が不適切 共有設定の「ユーザー追加」「リンク制限」を再確認 レポートが重くて表示に時間がかかる データソースが大量・複雑、ブレンディングが多すぎる 不要な結合やブレンドを減らす、BigQuery側で集計済みテーブルを用意 表示が遅い/崩れるときのチェックポイント
- 接続しているデータソースの数とブレンディング数
特にGA4やBigQueryなどウェブ系DSはリクエスト制限に引っかかりやすく、複数ソースを同時に呼び出すと遅延が発生しやすい。
→ 必要最小限のソースに絞って、複数ページに分散させる検討を。
- 大きな画像や重いグラフ
ダッシュボード上の画像ファイルサイズが大きいと、表示が遅くなる。
→ 画像を圧縮し、可能な限りSVGやベクター形式にする。
- JavaScript埋め込みや外部ウィジェット
ウェブページ埋め込み時に外部スクリプトを読み込むと表示速度がさらに落ちることがある。
→ 埋め込み用に軽量化したバージョンを作成し、必要な情報だけ表示する。
データが反映されないときの原因調査の進め方
- データソースの最新状況をチェック
- GA4:リアルタイムレポートで最新データが取得できているか
- BigQuery:直近のジョブ実行状況やエラーログを確認
- Looker Studio側の接続状況を確認
- データソース編集画面で接続ステータスを再認証、もしくは「接続エラー」の有無を確認
- フィルタ・期間設定の確認
- フィルタ条件が厳しすぎると、該当データがなくてグラフが空になることがある。
- 日付範囲が数年前など、意図しない期間設定になっていないか要チェック。
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応用・発展編──GA4/BigQuery×Looker Studioの活用事例
最後に、より高度なシナリオや実務で使われる応用事例を紹介します。ここを参考にすると、自社のデータ活用アイデアが広がるはずです。
GA4 × Looker Studioでの分析設計
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- カスタムイベントを見える化する方法
- 例:ECサイトで「カート追加ボタン」「購入ボタン」のクリックイベントを計測して、
どの広告チャネルからのCVが一番高いか可視化する。
→ GA4でカスタムイベントを定義し、Looker Studioで「イベントカテゴリ別」「広告媒体別」のクロス集計を作成。
- 例:ECサイトで「カート追加ボタン」「購入ボタン」のクリックイベントを計測して、
- コホート分析レポートの作成
- 「初回訪問日ごとのユーザーリテンション」を時系列で追う。
→ GA4上でコホートを定義し、それをLooker Studioに連携して可視化。
- カスタムディメンション/メトリクスの活用
- 独自の属性(会員ランク、LTVランクなど)をGA4に送信し、Looker Studioでダッシュボード化する。
事例リンク(別記事へ)
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- GA4×Looker Studioでコホート分析を作る方法(ステップバイステップガイド)
- ECサイト向け広告チャネル別ROASダッシュボード例
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BigQuery × Looker Studioのデータ可視化戦略
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- マーケティングデータの一元管理
- 複数媒体(Google Ads、Facebook Ads、Yahoo! 広告など)の配信結果をBigQueryに格納し、Looker Studioで横断分析。
→ 各媒体のAPI経由でBigQueryに定期インポートし、テーブルをJOINして「媒体別パフォーマンス比較レポート」を作成。
- 顧客行動データと売上データの結合
- Web行動(GA4)とCRM売上データをBigQueryで結合し、「購買ファネルごとの離脱率」「購入率」を可視化。
→ キャンペーンIDやユーザーIDをキーにマスター結合し、Looker Studioでファネル分析ダッシュボードを構築。
- AI活用の第一歩:予測モデル結果をLooker Studioで可視化
- BigQuery MLで「次月の売上予測モデル」を作成し、その予測結果をLooker Studioに取り込んで経営層向け
事例リンク(別記事へ)
- BigQuery ML × Looker Studioで売上予測ダッシュボードを作る方法
- 複数広告媒体横断ダッシュボードの実践例(テンプレート付き)
- マーケティングデータの一元管理
マーケティングダッシュボード事例
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- 広告運用ダッシュボード
- 主要KPI:インプレッション、クリック数、CTR、CPC、CPA、CVR、ROAS
- チャネル別比較:Google Ads/Facebook Ads/Twitter Ads(X広告)
- フィルタ:キャンペーン/広告グループ/クリエイティブ別
- SEOダッシュボード
- 主要KPI:Organicセッション数、オーガニックCV数、検索クエリ別表示回数、平均掲載順位
- Search ConsoleとGA4を別々に接続してブレンドし、「検索クエリごとのCVR」を可視化。
- ソーシャルメディアダッシュボード
- YouTube Analytics/Twitter Analytics/Instagram Insightsなどを統合し、投稿ごとのエンゲージメント率や流入コンバージョンを可視化。
- 広告運用ダッシュボード
- カスタムイベントを見える化する方法
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事例リンク(別記事へ)
- 広告運用担当者必見!Looker Studio広告ダッシュボードテンプレート配布
- Search Console × GA4 × Looker Studioで作るSEOパフォーマンスレポート
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営業・経営ダッシュボードの事例紹介
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- 営業KPI管理ダッシュボード
- 主要KPI:月次商談件数、月次受注数、平均商談単価、商談ステージごとの滞留日数
- HubSpotやSalesforceとBigQueryを連携し、営業活動データを集約。
- 経営ダッシュボード
- 主要KPI:売上推移(部門別・商品別)、利益率、在庫回転率、キャッシュフロー
- BIツールとしてLooker Studioを使い、PDF出力して経営会議資料として活用。
- 営業KPI管理ダッシュボード
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複数レポートの統合管理とテンプレート活用
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- Looker Studioのテンプレート機能
- Google公式が配布している「マーケティング ダッシュボード」「eコマース レポート」などの無料テンプレートを活用し、一部カスタマイズして自社用に最適化。
- レポート一覧ページの作り方
- 社内用のポータルサイト(Notion、Confluenceなど)に「Looker Studioレポート一覧ページ」を作り、レポート名、概要、更新頻度、リンクボタン、運用担当者などをまとめる。
→これにより「どこにどのレポートがあるか」を一元管理し、メンバーの利便性が向上する。
- 社内用のポータルサイト(Notion、Confluenceなど)に「Looker Studioレポート一覧ページ」を作り、レポート名、概要、更新頻度、リンクボタン、運用担当者などをまとめる。
- バージョン管理とバックアップ
- 毎月末に「ダッシュボード名_YYYYMMDD」などとコピーを保存し、古いバージョンを必要に応じて振り返れるようにしておく。
- Looker Studioのテンプレート機能
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おわりに
本ハブ記事では、初心者がLooker Studioを安心して学び、実際に運用するまでの全体像を網羅しました。
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- 第1章〜第7章で基本的な導入~運用フェーズのポイントを押さえ、
- 第8章以降の応用編で、GA4やBigQueryを活用した高度なデータ可視化アイデアを紹介しました。
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あくまでも本ページは「全体像を把握するためのハブ」として位置づけています。各章の詳細なステップや画面キャプチャ、実践的なプラグイン・スクリプトの使い方などは、以下の個別記事で詳しく解説していますので、必要に応じてそちらをご参照ください。
最後に
この記事が、これからLooker Studioを使ってデータ活用を始めたい方、また既に使っているが運用に悩んでいる方のお役に立てば幸いです。
もしご質問やご要望があれば、遠慮なくコメント欄やお問い合わせフォームからお寄せください。当社コンサルタントが丁寧にサポートいたします。